前半部の主役は源頼政です。
頼政は、後白河法皇の子でありながら母親が有力者ではなかったため、皇位継承とはかけはなれていた以仁王をかついで、平家転覆をねらいます。
皇位継承権をもたなかった皇族はたくさんいます。
一夫多妻制だったので、天皇の血をひいた子供は多いのです。
しかし皇位をもつのは、あくまで母親が有力者の血筋である藤原家であることです。
天皇の血をひいているだけでは、華やかな表舞台に立つことは一生ありません。
その鬱屈した生活を頼政は刺激して、以仁王から平家打倒のために決起する令旨(皇族からの命令を伝える文書)をおこさせます。
令旨を手に、十郎行家(頼朝の叔父)は全国にとびたちます。
平家の犬とよばれた源頼政から、平家転覆の賽は投げられました。
その行家の密使はすぐに六波羅(平家側)にもれます。
首謀者の以仁王と頼政は、一足先に以仁王の義弟がいる三井寺に逃げ込みます。
当時寺院は大変な権力をもっていました。
法衣の下に具足や武器をしのばせた僧兵に、平家も皇室も手をこまねいていました。
ちなみに僧兵の台頭により源氏や平氏の武士が力をもち、400年続いた貴族の時代は幕をとじます。
また寺院の権力を完膚なきまでに封じ込めたのが織田信長です。
その信長ですら10年かかったといわれるぐらい、寺院は力をもっていました。
科学も何もない時代には、宗教がすべてだったのです。
三井寺にかけこんだ以仁王と頼政ですが、三井寺は平家側につくことになり、目論見がはずれます。
現在冷遇されている藤原家が宗主である奈良の興福寺に逃げることにしますが、六波羅の追手は迫ります。
そして宇治川で相対することになります。
決起したときから自分の命はないものとして覚悟していた頼政。
真逆に命が恋しいお若い以仁王に頼政が自害を促すのは哀れで、物悲しかったですね。
後半の主役は頼朝です。
行家から令旨を受け取った頼朝は、20年間熱い本音をひた隠しにした隠居生活から、ようやく源氏の惣領たる威厳をあらわにします。
頼朝の嫁である北条家とのかけひきもおもしろいです。
まだ長年自分を慕ってくれたわずかな郎党しかもたない頼朝では、あくまで地元の権力者である北条家の力をかりなければ、何もおこすことはできません。
しかし、卑屈になることなく、頼朝は将軍たる威厳をもって、北条家に接します。
また後に尼将軍となる北条政子の、凛とした聡明さも際立っていますね。
大河ドラマでは杏ちゃんが演じたようですがぴったりです!!
政子が頼朝の子供を身ごもったことから、北条家は頼朝に加勢することにします。
まずは平家の目代の山本判官の屋敷を襲撃することにします。
三島の夜祭があったため家人はほとんど出払っており、あっけなく初勝利します。
そこから相模(神奈川)や武蔵の国(関東地方)に決起を促すために旅立ちますが、すぐに六波羅の知るところとなり、追手がまたもややってきます。
そして、有名な石橋山の戦いがおこります。
まだ兵が整わない頼朝側は完敗します。
そして敗走します。
頼朝はわずかな家来のみで朽木のうろのなかで身をひそませているときに、平家軍の
梶原景時にみつかってしまいます。
しかし、なぜか景時は見逃します。
頼朝に恩をうったと吉川英治は解釈していますね。
逃げ延びた頼朝たちは真鶴から安房(房総半島の南端)に船をだしました。
この小さな一戦で源氏は大きく好転して、平家の運は尽きたのです。